日本における外国人受け入れと子どもの教育 ―ブラジル人の場合を中心に―江原 裕美著

①日本をめぐる『移民』と教育―『外国人子女教育』の位置づけ
近代化や経済発展の関係と密接に関わる日本における国境を越えた移動
国境を越えた人の移動の流れを軸とした時代区分
膨張的植民地主義から戦時体制へ
明治前期の地租改正や通貨の改革―自作農の没落と農民の困窮―海外へ出稼ぎ
東南アジア・南洋への出稼ぎ(WWII頃まで続く)
アメリカへ―1900年ころ1920年までがピークで30年間で269,832人
中南米へ―1908~1945までで合計244172人
入移民―出移民に較べて極めて少ない、WWII中、朝鮮人が多く移住
戦前の国際的局面における教育 海外の日本人と国内の外国人
海外(日本人学校)においても日本においても臣民教育
外国人は同化、OR、排除
戦後の日本経済と対外関係における教育
植民地から630万人もの日本人が引き上げ
朝鮮戦争を背景に経済成長―企業の海外進出(アジア中心)の始まり(~74年)
1974∼5年―オイルショックからくる世界的不況
1980年~日本企業のグローバル化―日本の経済成長―外国からのデカセギの下地
海外子女教育と学校
海外子女―海外の日本人学校の拡大(1970年には39校、85年には38011人)
帰国子女―教育の『国際化』の名の下に受け入れ態勢の拡充
一方で在日朝鮮人など内なる『国際』は無視されていた
『外国人子女教育』問題のインパクト
1990年出入国および難民認定法―在日朝鮮人が『特別永住者』になり、法的地位認定
在日の人たちの教育的地位の問題は1960年代末から少しずつ変化
同上法律―日系人の在留資格『定住者』新設―日系移民のデカセギ開始
日系移民のデカセギに伴って『外国人子女教育』問題が表面化する
②日本における外国人と教育問題の意味
一、定住外国人の増大と多様化
2006年末―外国人208万4919人(日本の人口の1.63%)―過去一貫して増加
東京に36万人、大阪に21万人、愛知に15万7000人、神奈川に13万8000人
10都道府県に全体の70%が住む
国際結婚(2005年総結婚数の約6%)増加―両親のいずれかが外国人の子どもも増加
オーバーステイ―推定22万人
二、ブラジル人労働者の就労・生活と教育
不確定な永住への意志、永住傾向―両国を行き来するトランスナショナルな生き方も
不安定な非正規雇用―ジャストインタイムで供給されるフレキシブルな労働力
日本(非移民国)では外国人労働者が国民になることは想定されず―統合政策の欠如
しかし事実上、多くの外国人労働者は定住している―統合政策としての教育が問題化
③ブラジル人の子どもと教育問題の実際
一、不就学の子どもたち
2002年の調査では21%の子どもが不就学(長野県の調査)
様々な調査が別の数字―実態は明らかではない
背景―外国人の就学は義務ではない、という法解釈
不就学の放置―子どもの権利条約などの規約に違反するものである
二、日本の学校に通う子どもたち
2006年調査―日本語指導が必要な外国人―22413人―ポルトガル母語者8633人
学校間で支援にバラつき―外国人児童が多い学校(Minority)と少ない学校(Majority)
直面する問題群(pp34)
(日本語不十分による孤立、母語の喪失、支援人材不足、進路の困難、低い意欲など)
三、ブラジル人学校に通う子どもたち
ブラジルの教育課程に沿った教育をポルトガル語やスペイン語で行う学校
ブラジル人学校―ブラジルに帰国する者、日本の学校に適応できなかった人の受け皿
2007年の時点で約100校、うちブラジル認可校56校(うち、8校が閉鎖されていた)
問題―学校間の資源の大きな格差、高い学費、日本社会への適応とってはハンディ
PROS―ブラジルに帰国した後の接続にとっては効果的
④日本の学校教育の課題
三つの課題
一、法律面での問題の解決―義務教育への包摂、など
二、教育現場への外国人の受け入れ態勢の整理・構築
三、日本社会の構成員を育む場、という意識の下で外国人学校のあり方の再定義

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