J.S.ミル 自由論④

J.S.ミル著 自由論④

第四章 個人を支配する社会の権威の限界について


2017年1月22日
読了時間:30分

内容について
この章では、個人の自由に対してどのような制限が正当な制限として社会の権威に認められるか、個人はどのような制限を受けるべきか、という問いに応えています。

まず、基本的な姿勢として、ミルは純粋に個人にのみ関わることに関しては社会は一切関与をすることはできず、社会に関する個人の行動のみ社会には制限を行う可能性があるといいます。
それをミルは個人に与えられるべき二つの制限という形で言い換えます。
①個人は相互の利益を害さないこと
②個人は社会またはその成員を危害と干渉から守るために生じた労働について、各人は自己の分担を負うということ
この二つです。
少し複雑になった感じもしますが、基本的にミルのいっていることは個人は純粋にその個人にのみ関することであれば、自由であり社会からの干渉を受けることはない、ということです。
しかし、ここで一つ問題が生じます。それは、完全にある個人にのみにかかわる行為なんて存在するのだろうか、という問題でした。人間はみな社会の中に存在しているので、いかなる行動も他者の利害と結びつき得るのではないか、ということです。そうなると、いかなる行動にも社会からの干渉の余地が生じてしまいます。
これに対してミルは、個人の純粋にその個人にのみかかわるように見える行動が他の成員に影響を与えることの可能性を認めたうえで、こう答えます。
”個人に対してか、あるいは公衆に対して、明確な損害または明確な損害の危険が存在する場合には、問題は自由の領域から除かれて道徳や法律の領域に移される”
しかし、
”ある個人が、公衆に対する明確な義務に違反することなく、また自己自身以外の、誰それと名指しすることのできる個人に対して明白な損害を与えることもないような行為によって、社会に及ぼす単に偶然的な―あるいは推定的とも呼ばれうるような―損害に関しては、社会はこの迷惑を、人間の自由という一層重大な利益のために耐え忍ぶことができないわけではない”
つまり、個人が個人的な行動によって社会に与えてしまう影響については、その個人とその社会への影響が明らかに明確であるという場合を除いては、個人は社会の制限を受ける必要はなく、自由が尊重されるべきである、ということです。

今まで述べてきたことに加え、ミルは最後にひとつ、個人の自由が社会によって基本的に制限されるべきでないことの理由の中で最も有力な一つ根拠を付け加えます。
それは、非常にシンプルな理由であり、社会からの干渉が誤って行われたり、誤った場所で行われる惧れがある、ということです。

以上が第四章の内容になります。

コメント

なにが読まれているのでしょうか

シンボリック相互作用論とはなにか

主観/客観図式 デカルト

R. マートン 社会理論と社会構造 第4章 社会構造とアノミー